






同人漫画『タキオンさん、恋ステSS+研究中!』レビュー
全体的な印象
本作は、人気ゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』に登場するアグネスタキオンと男性トレーナーの関係を描いた二次創作ラブコメ漫画だ。マッドサイエンティストであるタキオンが、トレーナーを「感情の研究」と称して翻弄する様がコミカルに描かれており、読者は彼女の奔放さと、それに振り回されるトレーナーの姿をニヤニヤしながら楽しめるだろう。
ストーリーと構成
短編と中編の構成
本作は、Twitterで発表された短編3作と、描き下ろしの中編(前・後編)、そして幕間漫画で構成されている。短編は、タキオンがトレーナーに様々な「実験」を仕掛ける様子をテンポ良く描いており、導入として非常に効果的だ。中編は、短編で培われた関係性を深掘りし、タキオンの感情の変化や、トレーナーとの距離感がより繊細に描写されている。
感情の研究という名のイタズラ
タキオンは、一貫して「感情の研究」という名目でトレーナーに近づき、様々なイタズラを仕掛ける。その内容は、ドキッとするようなセリフを囁いたり、突然距離を詰めたりと、読者もトレーナーと一緒にドキドキさせられるものばかりだ。しかし、タキオンの行動はあくまで「研究」の一環であり、本心が見え隠れする曖昧な態度が、二人の関係性をよりじれったく、そして魅力的にしている。
恋人未満のギリギリラブ
本作の魅力は、何と言っても恋人未満のギリギリラブな関係性にあるだろう。タキオンはトレーナーを実験体として扱いながらも、その言動の端々には、彼への特別な感情が滲み出ている。一方、トレーナーはタキオンの思わせぶりな態度に戸惑いながらも、彼女から目が離せない。この絶妙な距離感が、読者の心を掴んで離さないのだ。
キャラクター
アグネスタキオン
タキオンは、原作のミステリアスで知的な雰囲気はそのままに、本作ではよりコミカルで可愛らしい一面が強調されている。彼女の実験好きで奔放な性格は健在だが、トレーナーへの独占欲や、少し照れた表情など、人間味あふれる描写が魅力だ。
トレーナー
本作のトレーナーは、顔が見えない表現で描かれ、セリフも少ない。これは、読者が自分自身をトレーナーに投影しやすくするための工夫だろう。タキオンに翻弄される彼の姿は、どこか共感を覚え、読者は感情移入しながら物語を楽しめる。
表現
コミカルな演出
本作は、ラブコメとしての要素を強く押し出しており、コミカルな演出が随所に散りばめられている。タキオンの奇抜な行動や、トレーナーの困惑した表情などが、ユーモラスに描かれており、読者はクスッと笑える場面が多いだろう。
繊細な心理描写
一方で、本作は単なるギャグ漫画に留まらず、タキオンの複雑な感情を繊細に描写している点も評価できる。彼女の言葉の裏にある本心や、トレーナーへの特別な感情などが、表情や仕草から読み取れるように工夫されている。
読みやすい構成
短編と中編の構成は、飽きさせない展開を生み出している。短編でタキオンのキャラクターや二人の関係性を掴んだ後、中編で物語がより深く展開されるため、読者はスムーズに物語に入り込むことができる。
良かった点
- タキオンのキャラクターが魅力的で、原作の雰囲気を損なわずに、より可愛らしい一面を引き出している。
- トレーナーとの関係性がじれったく、ドキドキさせられる。
- コミカルな演出が多く、気軽に楽しめる。
- 短編と中編の構成が、飽きさせない展開を生み出している。
- 絵柄が安定しており、見やすい。
気になった点
- トレーナーの顔が見えない表現は、読者によっては感情移入しにくいと感じるかもしれない。
- 全体的に糖度が高めで、人によっては甘すぎるかもしれない。
まとめ
『タキオンさん、恋ステSS+研究中!』は、アグネスタキオンと男性トレーナーの恋模様を描いた、非常に完成度の高い二次創作ラブコメ漫画だ。タキオンの魅力的なキャラクターや、二人のじれったい関係性、そしてコミカルな演出など、多くの点で読者を楽しませてくれるだろう。ウマ娘ファンはもちろん、ラブコメ好きにもおすすめできる一作だ。